先生の教科書

学校の教師を目指す人や、新任で自分のスタイルが定まっていない人に向けた、教育の考え方や授業の進め方について書いていきます。主に高校教師の方に役立つかと思います。

黒板の落とし穴と色

はじめに

あなたは黒板で図や文字を書いたりプリントを作る際、その「色」に気を使っているでしょうか?
色は学習における重要な要素であると同時に、十分気を付けないと、特定の生徒だけ理解できない図になっていた、と言うこともあり得るのです。

今回は特に後者、色の使い方のリスクと対策についてお勉強します。

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より良い授業をするために

はじめに

f:id:wing-ralges:20160619161246p:plain昨今の教育現場では、アクティブラーニングだとか対話型授業だとか、いろいろ難しい単語が飛び交っていますが、それらは手段にすぎません。

そういった手法を取り入れることは賛成ですが、「なぜその手法が有効なのか」本質を理解しないままだと、教師として次のステップに進むのは難しいでしょう。

 この記事が、今後自分が教師としてどのような授業をしていくべきか、何を学んでいくべきか、を考える手助けになれば幸いです。

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教師をとりまく3つの環境

教師になると、自他の多様な思いが交錯する「授業」という現場へと放り込まれます。
これらの思いは大きく3つの要素に分解できますが、これらを正しく整理し把握することで、今自分がやるべき授業と、今後自分が学ぶべき点がはっきりしてきます。

  1. 授業に求められるもの
  2. 授業でやりたいこと(理想像)
  3. 授業でできること(⇔できないこと)

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1.求められるもの

授業に対して求められるものとは?
こう聞いて真っ先に思い浮かべるのは何でしょう?

 

楽しく学べること?
理解しやすいこと?
単位をとれること?
就職/進学できること?

 

そうですね。
考えれば考えるほど、いろいろ出てきます。
これらの出所は普段接する生徒だったり学校だったり、見えないところでは教育委員会や、生徒が就職する企業だったり、様々です。

一度、下のような図を書いて整理してみると良いでしょう。

 

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図1.授業に求められるもの

 

工学系の方は説明不要かもしれませんが、上の図で、それぞれの円が、各グループから求められるもの、円が重なるところはそれら複数のグループが要求するものです。

この内容はあなたの属する環境によって異なるので、答えはありません。
上図と必ずしも一致しなくてよいですし、まだほかにもあることでしょう。
あなたの思うとおり、なるべく多く書き下してみてください。
※環境によっては、円自体が増える方もいるでしょう。

その結果、多く書けたところほど、あなたが現在気にかけている≒見えているところと考えられます。

そうすると、「無意識に対応できている要求」「意識して解決している要求」「見えているけど解決できていない要求」「見えていないから何となく不安に思っている要求」それぞれが見えてきます。
※どことなくジョハリの窓みたいですね。

これらが見えてくると、自分が何を知るべきか分かるのではないでしょうか。

たとえば、生徒から求められることがほとんど空欄であれば、まず生徒の考えを理解する必要がありますし、書けた(=見えている)けど対処できていないのであれば、具体的な対処法を検討する必要があります。

これらの対処については、次回以降の記事で書いていきたいと思います。

 

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 2.授業でやりたいこと(理想像)

やりたいことと理想像は微妙に違いますが、ここではセットでお話しします。

自分の「やりたいこと」は、先ほどの図の中のどこに当てはまるのか、当てはめてみましょう。

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図2.自分のやりたい授業

 

おっと・・・よくばりですね。ほとんどを囲っています。
しかも、「求められること」の時はなかった「自分の強みを活かした授業」ってなんでしょう?

まぁ、それはまた別の機会にやるとして。。

こんな感じで、求められている/求められないに拘らず、やりたいことをとりあえず書いて囲ってみます。

恐らくここで囲まれた部分は自分が積極的に改善を進めているところだと考えられます。

そのエリアをさらに深掘りしていくことはよいことですが、逆に、枠からはみ出した部分のケアを忘れないようにすることが、より良い教師になるためのポイントです。

 

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3.授業でできること/できないこと

授業で自分が何かしたい、と思ったとき、それは必ず制約事項があります。

それは時間の問題や、場合によってはお金の問題、自分のスキルの問題など、様々です。

2.で作った図に書いてある、「できないこと」を消していきましょう。

 

「お金がかからない」を消して、「実践的スキルの醸成」を消して・・・・

 

 

・・・ん?

 

 

ちょっと待ってください。

 

今、なんでそれを消したのでしょう?

できない理由は?

それが、「学校/教育機関が明確に禁止している」「現実時間では10年かかってもできない」など、外的要因であるならばやむをえません。
でも、「自分にその知識がないから」「やってよいかどうか分からないから」「方法が分からないから」で消してしまうのは、非常にもったいないです。

知識がなければ勉強すればよいでしょう。
やってよいか分からなければ聞けばいいでしょう。
方法についても、調べれば誰かしら対策を講じている人がいます。

こういった知識や対策を自分の授業に反映しつつ、それでも解決できなかった課題に対してさらに対策を講じる、これを繰り返すことで自身の授業の質を改善しつつ、「できないこと」をどんどん減らしていくことができるようになるでしょう。

人によっては、お金や環境がないことさえも解決している人もいます。

そういった、自分の努力で何とかなるものは【課題】とでも書いておいて残しておくと良いでしょう。

そうしてできたイメージがこちら。

 

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・・・何も消してないですね。はい。
ここで語っておいてなんですが、この段階で何かを消してしまうのは、時期尚早ではないかと思うのです。

それぞれに対する手段を具体的に考えた時点で初めて、時間やお金と言った定量的な比較ができるので、そこでその手段を削除するのは仕方がないと思います。

ただ、いくつかの手段が削除されたからと言って、その目標自体を実現不可と判断するのは、避けておいた方が無難です。

10以上の手段を模索して初めて見つかる解決策もあります。
20を超えても有効な策がないこともあります。

 

とあるえらい人の名言に、以下の言葉があります。
「できない理由を考える暇があったら、実現する方法を考えろ。」
これは向上心のある人にはよく響き、一般企業でも色んな人が引用しています。

でもこれ、言いたいことは分かりますが、ちょっと間違っていると思います。
できない理由を十分に分析したうえで、その理由をなくす、あるいは回避する方法を検討していくことが、より良い授業をするための、ひいてはより良い先生になるためのカギになるのではないでしょうか。

みんなの「できない」を「できる」に変える、教師としては最も大事な役目の1つですね。

 

本ブログは、微力ながらも、そんな先生たちの手助けになる記事を書いていきたいと思います。